カテゴリー「2006年ニューヨーク・バーク・コレクション展(東京)」の2件の記事

2006年2月10日 (金)

快慶 地蔵菩薩立像

(注)東大寺公慶堂の快慶作 地蔵菩薩立像についてはhttp://hiyodori-art2.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-82ce.html

お会いした仏さま   快慶 地蔵菩薩立像
お会いした日      2006年2月5日
お会いした場所     ニューヨーク・バーク・コレクション展にて
               (東京都美術館 会期2006年1月25日~3月5日)
工法           木造 彩色(元は肌色だったが、今は真っ黒)
持物           右手に錫杖(しゃくじょう)を持つ
               左手には宝珠を持っていたと思われる(今は失われている)
切金の美しさ    ☆☆☆☆☆ 感動的な美しさ!
展覧会サイト    
http://www.tobikan.jp/museum/burke.html

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一目で快慶と分かるところが快慶のすごさ

 昨日、バーク・コレクション展に出展されていた快慶作とされる不動明王坐像について、書きました。今日はその続きで、やはりこの展覧会に出展されていた快慶作のお地蔵さまについて書きます。

 このお地蔵さま、細い目の奥に玉眼が光っています。この目がとても印象的でした。
 足の位置よりも頭の位置が前になった前傾姿勢のように見えますが、よく見るとそうではなく、ただお腹を突き出して立っていらっしゃいます。
 お腹の部分がふっくらとしていることで、前から見ると、全体に貫禄があるように見えます。これを横から見ると、一瞬、私たちを助けに来てくださる前傾姿勢のようにも見えるのです。
 また、でっぱったお腹から下の衣の部分と、お体の後の腰から下にかけて、見事な切金が残されています。精巧な亀甲文や七宝繋文が見られ、感動的です。

 解体修理で、「アン阿弥陀仏」という快慶を示す墨書きが見つかったため、快慶の作品であることが確認されているそうです。

 昨日アップしたお不動さんといい、このお地蔵さんといい、一目で快慶の作品と分かるのが、快慶のすごさだと思います。同じ慶派の方たちの中でも、これほど優美かつ優雅な表現をする人はいないように思います。

あとがき…写真ゲットできず!
 快慶らしい優美さが出ている立派なお地蔵さまですが、なぜか今回の展覧会では、このお地蔵さまのポストカードなどのグッズが販売されていませんでした。
 唯一、展覧会カタログに写真が掲載されているのみでした。しかも、この写真は本物のよさを伝えてないように思えたので、その旨、アンケートに書いておきました。快慶さんはフォトジェニックじゃないのかしら。

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2006年2月 9日 (木)

快慶(伝)不動明王坐像

お会いした仏さま   快慶(伝) 不動明王像
お会いした日     2006年2月5日
お会いした場所   ニューヨーク・バーク・コレクション展にて
                               (東京都美術館 会期2006年1月25日~3月5日)
工法           木造 彩色(元は青色だったが、今は真っ黒)
台座の有無     黒い瑟瑟座(しつしつざ)あり[注1]
持物           金の剣を右手に、色鮮やかな羂索を左手にもつ(後補)
装飾品         首から飾り石のついた瓔珞(ようらく)[注2]をかけている(当時
のもの)
坐像か立像か    坐像
保存状態       ☆☆☆☆☆     
写真より実物    ☆☆☆☆☆
快慶らしさ       ☆☆☆☆☆     
お不動さんらしさ  ☆☆☆☆☆

一言          ニューヨークに連れて行かれず、日本に残っていらっしゃったら

                              絶対に国宝指定だったで  しょう!

展覧会サイト    
http://www.tobikan.jp/museum/burke.html

<バーク・コレクション展って?>
 快慶のお不動さんに会いに、上野の東京都美術館で開かれている「日本の美 三千年の輝き ニューヨーク・バーク・コレクション展」に行ってきました。ニューヨークにお住まいのメアリー・バーク夫人が所有する日本美術のコレクションが「里帰り」した展覧会で、縄文土器から狩野派、琳派、伊藤若冲のほか、与謝蕪村や池大雅の文人画まで、日本の美術史をたどる壮大な内容でした。
 この中で、鎌倉時代までの仏像が数点、展示されていました。

<快慶らしさ…>
 特に一押しだったのは、快慶作と伝えられる不動明王坐像です。展覧会パンフレットに写真が載っている唯一の仏像でした(上記のサイトもご参照ください)。
 正直なところ、この写真を見た段階では、あまり期待していませんでした。快慶の優美さを前面に押し出した作風と、お不動さんの荒々しさがミスマッチのように感じられたからです。お不動さんはやっぱりとことん恐くなくっちゃ、というのが私の持論なのです。

 ところが、実際に目の前でお会いしたお不動さんは、息をのむようなできばえでした。会場で思わず「すごい」とつぶやいてしまったくらいです。

 確かに、快慶独特の優美さは出ています。少女漫画で、目に星が飛び散り、背景にお花が舞っているような、そんな快慶らしさは十分に出ています。顔や体全体が整っていて、きらびやかな感じが確かにあります。

<…そして、お不動さんらしさ>
 しかし、それだけではなかったのです! 
 つりあがった目に光る玉眼は迫力満点。左肩に垂れ下がる辮髪のバランスも抜群です。
 鼻は、昔話絵本に登場する悪いおばあさんの鼻のように大きく、三角に曲がってとがっています。
 口元を見ると、下唇をしっかりと噛みしめる上の前歯に力がこもっています。
 左右の耳も大きくたれさがり、重量感が出ています。
 決してお人形さんのようではなく、慶派らしいリアリズムも十分にあります。
 優雅さもあるけど、お不動さんらしい迫力が際立つ仏さまでした。

<日本にいたら国宝ですよ!>
 この快慶作品はアメリカのお金持ちに購入され、普段はニューヨーク住まいなわけですが、日本に残されていたら、きっと国宝に指定されていたと思います。
 さらに、日本のどこかのお寺に残されていたら、毎日お経やお供物やお線香で大切にご供養されていたことと思います。
 どういう経緯で渡米したのかは分かりませんが、残念でなりません。

トリビア
<なぜ快慶作品とされているのか?>
 この作品は、パンフレットに「快慶(伝)」とあるように、快慶作品と断定されたものではありません。
 音声ガイドの説明によると、京都・醍醐寺(霊宝館)にこれとよく似た快慶作の不動明王坐像があることから、快慶の作品と推定されているそうです。


<醍醐寺の快慶作の不動明王との比較>
 今、醍醐寺の快慶作の不動明王坐像の写真を見ているのですが、確かに似ています。鎌倉時代以降のお不動さんは、右目で天を見上げ、左目はすがめて下を見る「天地眼」と呼ばれるスタイルが主流になっていったと思うのですが、この醍醐寺の像と、バーク・コレクションの像はともに、前方をにらみつけた「正眼」と呼ばれるスタイルです。平安時代の古い作り方にならった作風なのかと思いました。大きさも同じくらいです。
 ただ、今回見たお不動さんには光背がなかったのですが、醍醐寺のお不動さんは立派な火炎光背をおもちです。めらめらと燃える炎が、憤怒の表情をひきたてています。

注1 瑟瑟座(しつしつざ)=不動明王に特有の四角い石のような形を積み上げた台座
注2 瓔珞(ようらく)=お不動さんが首からかけているネックレスのようなもの。三省堂『大辞林 第二版』には、「珠玉や貴金属に糸を通して作った装身具。もとインドで上流の人々が使用したもの。仏教で仏像の身を飾ったり、寺院内で、内陣の装飾として用いる」とあります。

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