カテゴリー「平櫛田中美術館」の2件の記事

2009年2月25日 (水)

平櫛田中美術館「仏像インスピレーション」展 その2

↓展覧会ポスター

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↑ 美術館近くを流れる玉川上水

今日の仏像:

(1) 奈良・新薬師寺の香薬師如来立像(金銅、高さ75センチ、飛鳥時代後期)

  お写真:同寺のサイトhttp://www.k5.dion.ne.jp/~shinyaku/img/butuzou/img2.html

(2) 平櫛田中の薬師如来立像(木彫金彩、高 124センチ、昭和39年)

  お写真:小平市サイトhttp://www.city.kodaira.tokyo.jp/bijyutsu/002/images/img_2389_1_1.jpg.html


(前記事からのつづき)

 最後になるが、この平櫛田中彫刻美術館には「記念館」と呼ばれる建物がある。もともと平櫛田中が居住していた家で、居住スペースの中に田中の作品が展示されている。

 その中の一つの作品に息を飲んだ。それは、奈良・新薬師寺の香薬師如来立像を平櫛田中が模刻したものだった。

 新薬師寺の香薬師さまは、白鳳期に典型的なあどけない童子のような微笑をたたえた金銅像で、昭和18年に3度目(!)の盗難にあって以来、いまだ見つかっていない仏さまである。最近、仏像の盗難があいつぎニュースになっているが、この仏様は、その美しさといい、複数回盗まれているという点といい、いわば「元祖 盗難仏」とも言える仏像だと私は思っている。

 平櫛田中 先生もこの薬師さまに思うところがあったのだろう。昭和39年、木彫に金の彩色でそのお姿を再現したのだった。

 田中の薬師さまは金色をベースにした彩色が美しいが、かえって本物との違いが際立って感じられ、悲しい気持ちになってしまった。

 新薬師寺の香薬師さまの微笑は白鳳彫刻の宝物。one and onlyのスマイルなのだ。

オリジナルの仏さまが見つかれば、気持ちも晴れると思うのだが。今頃どこにいらっしゃるのだろう。ご無事でのご帰還を祈るのみである。

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2009年2月18日 (水)

平櫛田中美術館「仏像インスピレーション」展 その1

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展覧会: 仏像インスピレーション~仏像に魅せられた彫刻家たち

      円空、木喰から平櫛田中、萩原守衛、高村光太郎、そして現代彫刻まで

場所: 平櫛田中美術館(東京都小平市)

開催期間: 20081017日~1124

訪問した日: 2008117

 彫刻家 平櫛田中の名を冠した美術館で、「仏像インスピレーション」という展覧会が開かれた。この展覧会のポスターを見たとき、「これは行かなくては」と直感した。

 まず「仏像インスピレーション」というタイトルがいい。明治時代以降の彫刻は西洋化、近代化が進むものの、古来の仏像彫刻の影響を免れることができなかった。「明治を断絶の時代ではなく連続・変化の中で捉え、古来より日本彫刻の主流をなしてきた仏像との影響関係を検証することで、これまで明らかにされることのなかった日本近・現代彫刻の相貌を浮き彫りにしたい」(リーフレットの説明より)という展覧会の趣旨が、「仏像インスピレーション」というタイトルに表現されていた。

 要するに、明治以降の日本彫刻を仏像との関わりから考えるという趣旨だと私は理解した。これは私が、1893年シカゴ万博に出展された高村光雲「老猿」と竹内久一「伎芸天」を見たときから、気になっていたテーマでもあった。

 展覧会場に入ると、1階には明治から昭和に作られた作品が並んでいた。なかでも、大内青圃の「花の観音」(像高43cm)に魅了され、光背から手の伸びた「千眼千手観自在」(像高30cm)に度肝を抜かれた。佐藤朝山の「聖徳太子像」(像高63cm)(1919年)は斬新だった。

 階段を上ると、円空作品があった。日光・清瀧寺の不動明王像、制多迦童子、矜羯羅童子像で、すでに何度か見たことがあった。一本の木材を縦半分に割ってお不動さまを作り、残りの半分をさらに二つに割って二童子を作った、円空の代表作である。自然なままの木を利用した火炎光背は何度見てもすばらしい。

 その後、薮内佐斗司の彩色された童子像「こぼすなさま」と「守銭童子」は、像高それぞれ44.7センチ、29.0センチながら、作品に大きな力が感じられた。

薮内さんデザインの「せんとくん」を私が認めないのは、尊敬すべき如来さまの姿に鹿の角を生えさせたから。今回私が見た薮内さんの童子像は、完全に「童子」であり、愛らしさと迫力が共存しているところがすごい。確かな造形力は、ゆるキャラには向かないと思う。

 隣の展示室で、平櫛田中のブロンズ作品「ウォーナー博士像」と「岡倉天心胸像」が展示されていた。どちらも全体がすべて金箔で覆われていて驚いた。全身金箔は如来さまか菩薩さまといった仏像にしか使わないものだと思っていたからだ。天心を尊敬しているが、人間の像に金箔を使う表現には戸惑ってしまう。展示横の解説には、ウォーナーと天心への敬意を込めて金箔にしたのだとあった。やはり仏像を意識していたのだと思った。

 地下の展示室に移動すると、モダンな作品が展示されていた。 咸二の「降誕の釈迦」は、愛読書『日本仏像史』の最後に写真入りで紹介されていた作品だった。写真でお馴染みの作品の実物に思いがけず出会えてうれしかった。

しかし、特に感動したのは、舟越桂の『言葉を聞く山』(1997 高さ90cm)である。舟越桂の作品は、仏像好きな人ならきっと心打たれる作品だと思っていた。私は今回初めて、舟越作品の実物を拝見したが、静謐で豊かな表現を前に立ち尽くした。2008年夏の舟越の展覧会を見逃したことを悔やんだ。

 三沢厚彦の犬や猫の作品は、どこに仏像からインスパイアされた部分があるのか分からなかったが、本人が会場受付そばの壁に自ら設置したというトカゲの彫刻はかわいらしかった。(つづく)

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