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2015年4月16日 (木)

伝康慶という事実と地域の信仰のはざまで@龍泉寺(八王子市長房町)

八王子市長房町の龍泉寺。

このお寺では、毎年、春分と秋分をはさむ3日間、ぽっくり観音さまがご開帳される。
去年の春のご開帳のときの参拝記録はこちら

前回、ぽっくり観音様を拝観した際、帰り際にご住職から渡された一枚の資料(龍泉寺の縁起)に、驚愕の事実が書かれていた。

「ご本尊阿弥陀如来坐像は康慶作」。

この点が気になり続けて丸一年。2015年3月21日、念願かなってやっとまた拝観させていただくことができた。今回は多摩仏研でもお世話になっているソゾタケ氏と二人で、ご住職からお話を伺うことができた。

ご本尊阿弥陀如来さまは見た目50~60センチの坐像で、なかなか凛々しいお姿。

昔、龍泉寺のご本尊が焼失したことを受けて、八王子の大善寺が江戸の増上寺に依頼し、増上寺から譲り受けたお像だという。私は資料に大善寺とあるのを見て、てっきり山梨県勝沼の大善寺だと思い込んでいたのだが、ご住職によると、同じ大善寺でも八王子インターに近い八王子の大善寺だという。

八王子の大善寺は今は単立だが、昔は龍泉寺と同じ浄土宗の大寺院で、龍泉寺はその末寺だったそうだ。いずれにしても、大寺院の名前が二つ並ぶことから、由緒あるお像である可能性は否定できない。


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現在、このように金箔のお姿であられるのは、近年に修理を受け、その際に金を施したからだ。ご住職に伺うと、修理が行われたのは昭和から平成に変わる頃だったとのこと。つまり、今から30年ぐらい前の話らしい。この像の両脇に来迎の形の観音・勢至坐像がおられるが、修理のときに制作されたのだそうだ。

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お像を拝見する限り、「これが康慶か」と言われてもよく分からない。
まず、金が厚塗りされていて、元の造形が分かりにくくなっている可能性がある。
もし本当に康慶だったとしても、頭頂部が低い(ソゾタケ氏から指摘を受けて気づいた!)ことなどを考慮すると、江戸時代あたりに大幅な修理を受けている可能性もある。

仏像ファンとしては、近年の修理で金箔になってしまったことは残念だ。金箔の厚塗りで印象が変わった例はいくつか見ている。
しかし、その一方で、金色に輝く来迎阿弥陀三尊を前に胸があつくなる、阿弥陀ファンの自分も存在する。

こちらのお寺は本当に小さなお寺だ。そして、実に気持ちのよいお寺でもある。
それは康慶仏がおられるからではない。
お彼岸の日、次々とお参りに訪れるお檀家さんたちの姿があった。皆さんご本尊をお参りしてから、墓参をされる。ご住職はお堂の前に立ち、お檀家さんたちに声をかける。奥様らしき女性はお茶を用意してお迎えする。

私はご住職に「修理前の写真は拝見できませんか?」と聞きたかったのだが、躊躇した。
それは、それをお聞きすることが金箔修理を否定することになり、お寺の関係者の気持ちを傷つけかねないと考えたからだ。

考えすぎだという人もいるだろう。

岡倉天心以降、修理は原状回復に決まってるだろうという人もいるだろう。

でも、どんなに頭脳明晰な人が文化財保護の理論を並べても、今のご本尊にとって何の意味があるのだろう。。。 

先祖代々お守りしてきたご本尊と、それを中心にした長房町のお檀家さんたちのコミュニティ。それは理論ではなく、人の心の奥深くにあるものが現在まで受け継がれてきた証なのだと思う。

ひらたく言うと、ビジネスで通じる理屈と、地域の集まりで通じる理屈は違うという感じだろうか。信用が大切というべきか。なんとも、表現が難しいが、私はそんなものを確かに感じている。

だったら、なぜわざわざ康慶とうたう必要があるのか、という反論もあるかもしれない。しかし、お寺の方々からしたら、「詳しくはわからないけど、昔から康慶作と伝えられてます」、ただそれだけのこと。そこに何の理屈もない。
実は、21日の拝観後、ソゾタケ氏がネットに上げたこの阿弥陀様の写真にかなりの反響があった。仏像の専門家の先生からも問い合わせがあったようだ。

私自身、本当に康慶だったらよいと思う。
しかし、それ以上に大切な、うぶというか、イノセントな信仰がこのお寺とご本尊にはあると思う。

将来的にもし本格的に調査が入るようなことがあったとしても、うぶな信仰という宝物だけは傷つけられないようにしてほしい。仏像ファンであり、阿弥陀ファンである私の願いである。

(お話くださったご住職とご一緒してくださったソゾタケさん、ありがとうございました! 勉強になったし、楽しかったです!)

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