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2010年2月13日 (土)

興福寺・阿修羅像と2009年阿修羅ブーム

出かけた展覧会:
   国宝阿修羅展@東京国立博物館(訪問日 2009年5月5日)
   お堂で見る阿修羅@奈良の興福寺さん(訪問日 2009年10月25日)

 昨年、興福寺の阿修羅を中心とする展覧会が九州国立博物館と東京国立博物館を巡回した。最後に、本家・興福寺の仮金堂で、「お堂でみる阿修羅」と題した企画展示が行われた(注)。
 私は、東京都と興福寺の展示を参拝した。どちらも大混雑で、阿修羅ブームを目の当たりにすることとなった。

 昨今の仏像ブーム。基本的に日本人は日本の仏像が好きだと信じているので、特には驚かない。
 ただ、上野の東博に集まった人の数を見ると、ブームに踊らされてやってきた、いわゆる「みーはー」な人も含まれているように思う。
 それは真の仏像ファンになる一つのきっかけなので、私は否定しない。子どもの頃から仏像が好きで、よく「変わっているね」とほめられて(?)きた私にはむしろ、周りの目が温かい中で仏像ファンになれることがうらやましい。

 このように展覧会に集まる人たちに私が言いたいことは2つだけ。

 一つは、キャッチコピーや宣伝文句に縛れすぎないでほしいということ。自分の感性と経験から感じてほしい
 たとえば、今回の国宝・阿修羅展では、阿修羅像をして「天平の美少年」というフレーズがよく使われた。これは決して間違ってはいない。しかし、それだけではない。光明皇后さまのつくられた仏さまなのだから、そんなに単純なわけがない。
 あの眉の動きは、これから泣き出しそうにも、笑い出しそうにも見える。大変微妙な表現だ。だからこそ、拝む人の感じ方次第で、大きく表情が変わる
 私が春に上野でお会いしたとき、阿修羅さまのお顔は、子どもからの相談に悲しみを覚える母の顔に見えた。
 大切に育てたわが子が大きな失敗をしてしまった、あるいは悲しい目にあった。その失敗や悲しみを大きく包みつつ、同時に自分もその痛みを同程度以上に感じ、それをあえて子どもに悟られないようにする母の姿に私には見えてしかたがなかった。
 ところが、興福寺の仮金堂でお会いしたときには、なぜか阿修羅さまは初々しい子どもの表情だった。無邪気に笑い、子どもらしく上気した薄紅のほほまで私には見えた。
 これをどう解釈するのか。地元の展示会場でお会いするときは日頃の悩みが抜け切れないのに対し、旅先ではそれが完全に抜け切ったのではないかと思っている。勝手な解釈かもしれないが、優れた仏像ほど、拝む私たちの内面を映し出してくださる。心を映す鏡の役割を果たしてくださる。
 だからこそ、阿修羅さまにお会いした一人一人がそれぞれ自分だけの阿修羅さまを感じてほしい。展覧会の宣伝文句がその妨げとならないことを願う

 二つ目は、仏像に敬意を払ってほしい
 去年の三井寺展では、大変貴重な秘仏を公開してくださっているのに、仏像や仏画の前で大きな声で品評しあう声が聞かれ、とても悲しかった。
 今回の阿修羅展でも、その他の展覧会でも、デリカシーなく大声で語り合う人がいるのが残念でならない。(ただ大好きな橘夫人の阿弥陀三尊像の前に人だかりができ、「きれいね」という声が聞こえたときは嬉しかった)

 最後に、私の心の師の一人である、亀井勝一郎さんの著作から、次を引用する。
 「仏像を語るということは、古来わが国にはなかった現象である。仏像は語るべきものでなく、拝むものだ。常識にはちがいないが、私はこの常識を第一義の道と信じ、ささやかながら発心の至情を以て、また旅人ののびやかな心において、古寺古仏に対したいと思ったのである。仏像が私にそれを迫ったと云っていい。つまり私は菩提心を誘発されてしまったわけだ」
 すべての仏像との出会いがこうでありますように。

(注) お堂なので「展示」という言い方はふさわしくなく、「おまつりする」というべきだが、ご勘弁いただきたい。お寺さんの方でも、「お堂で拝む」ではなく「お堂でみる」という表現を使っており、博物館展示の影響を感じてしまったのです。最近の東京国立博物館並みに凝った照明となっており、それまでの国宝館とは一線を画していた。本来、西金堂では端に配されていたい阿修羅さまが、今回、仮金堂では堂々と中央全面に配されていた。

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